熱帯魚水槽の立ち上げ方

水槽の立ち上げ方について

水槽

熱帯魚を安全に飼い始めるための水槽の立ち上げ方をお伝えしていきます。

熱帯魚飼育における水槽の立ち上げ方

熱帯魚基礎知識飼育水槽保温器具フィルター底砂照明器具水槽の立ち上げ困った時の対処法

水槽の立ち上げとは

新しくセットしたばかりの水槽は環境がとても不安定で、この状態ではいかに素晴らしいフィルター(濾過器)がついていたとしても、熱帯魚を安全に飼育することはできません。そこで必要になるのが水槽の立ち上げです。

水槽の底砂や濾材の中に濾過バクテリアを殖やし、水中に発生する有害物質を速やかに処理できるような仕組みを整えること、これを水槽の立ち上げと言います。これは熱帯魚のみならず、メダカや、金魚など、あらゆる観賞魚の飼育において最も重要なポイントのひとつです。

水槽の立ち上げ方について

熱帯魚を安全に飼い始めるための水槽の立ち上げ方をお伝えしていきます。

熱帯魚における水槽立ち上げのポイント

初心者の方は誤った手順で水槽を立ち上げようとして水を白く濁らせてしまったり、熱帯魚の体調を崩してしまったりと、どうしても立ち上げに失敗して水槽のバランスを崩してしまいがちです。特に濾過バクテリアの全くいない状態からのスタートは初心者の方には難しいため、すでに他の熱帯魚水槽に入っている水草(枯葉も含みます)、流木、砂などを入れることによって、濾過バクテリアが活動してない空白の期間をなくすことが大切です。

正しい手順で水槽を立ち上げた場合でも、念のため、アンモニアと亜硝酸塩の濃度を簡易的な試薬で計測されますと万全ですが、水槽の状態もおおよその目安となります。水槽の立ち上げが失敗していない場合はだいたい次のようなプロセスとなります。

  1. 水槽の立ち上げ初日は若干、水道水よりも透明度が落ちたように感じられる場合があります。
  2. 水槽の立ち上げから3日の間に、わずかに白く濁ったような状態になることがあります。この場合にはエサや熱帯魚の数を減らします。明らかに水が白く濁る場合には水槽の立ち上げに失敗していますので、もう一度、手順に誤りがないかをよく確認してみる必要があります。
  3. 水槽の立ち上げから一週間もすると、水はかなり透明になります。これ以降はますます水が澄んでいき、感覚的には水槽の中が輝いて見えるようになります。
  4. 水槽の立ち上げから一ヶ月ほど経ちますと、水槽は立ち上がった状態になります。この頃から濾過バクテリアの生成した硝酸塩により、わずかにコケがみられる場合があります。コケが多すぎる場合には硝酸塩を減らすために4分の1ほどの水換えを行い、エサや熱帯魚の数を減らします。

なお、市販のバクテリア剤はほとんどの場合、ここで解説している濾過バクテリアとは種類が別になりますので、こうしたものを使用する場合でも、やはり熱帯魚を飼育している水槽にしばらく入れておいた水草や流木、砂などを入れることにより、その表面にいるわずかな濾過バクテリアが少しでも早く殖えることを期待するのが良いでしょう。

亜硝酸塩の毒性はたいへん強く危険ですが、淡水性の熱帯魚でしたら海水魚と違い、亜硝酸塩が増えたからといって鼻上げなどの前ぶれもなく突然死んでしまうというようなことはそうありません。むしろ水温や水質の変化などで弱り切ってしまったために、わずかな亜硝酸塩の増加にも耐えきれなくなってしまうというケースが危惧されます。

環境が不安定なうちはあまり水をいじらず、できれば1〜2週間後に、熱帯魚も環境に慣れ、ある程度の変化にも耐えられる体力がついてから、最初の水換えをしてあげるのが無難です。熱帯魚を飼い始めて一ヶ月も経つ頃には濾過バクテリアもだいぶ殖えて環境も安定してくるため、管理にも手がかからなくなってきます。

最初に入れる熱帯魚とアカヒレ

熱帯魚は種類によって丈夫だったりそうでなかったりしますので、環境の不安定な立ち上げの際には、できるだけ丈夫な種類の方が成功しやすいと言えます。特に次のような種類がおすすめです。

アカヒレ ゴールデンアカヒレ
ニューギニアレインボー ネオンドワーフレインボー
青いベタ 赤いベタ
ゴールデンハニードワーフグラミー レッドグラミー
ネオンテトラ カージナルテトラ

立ち上げ時の水換えについて

熱帯魚の飼育を始めて、最初に水換えをするタイミングというのは初心者の方が最初に直面する壁です。これは飼育している熱帯魚の数や種類によっても違いますが、主なポイントはふたつあります。ひとつは濾過バクテリアが少ない状態では、熱帯魚の飼育によって生じるわずかなアンモニアでも危険な状態になりかねないということがあります。その一方で、アンモニアは濾過バクテリアを殖やすのに必要となります。

熱帯魚が安全な状態までのアンモニア量を維持するような飼い方が水槽の立ち上げには有効です。具体的には最初に入れる熱帯魚の数を少なくして、エサもごく少量にすることにより、毎日、わずかずつのアンモニアしか発生しないようにするというものです。濾過バクテリアが繁殖するのに必要な量のアンモニアしか発生しなければ水を換える必要はありませんし、また、熱帯魚に水換えによる水質変化という余計なストレスを与えることもありません。

ただし、水草や流木など、他の水槽に入っていたものが何もなく、本当に濾過バクテリアがゼロの状態から始めるとなると事情は更にシビアになります。この場合は熱帯魚の数がいかに少なくても、最初の1週間は可能なかぎり、4分の1ほどの水換えを行う方が失敗が少なくてすみます。

飼育できる熱帯魚の数

熱帯魚をどのくらい飼育できるかは、水槽の大きさとフィルターの性能によります。ですが、どんなに高性能のフィルターがついていても、水槽をセットしてすぐの頃は、濾過器をつけていないのと大差ありません。差が出てくるのは濾過バクテリアが本格的に活躍しはじめる一ヶ月後くらいからです。

そのため、水槽の立ち上げ時には、水を2リットルに対して、メダカくらいの大きさの熱帯魚なら1匹を目安に飼い始めると良いでしょう。フィルターがついているなら2週間後くらいからは少しずつ増やしていくことができるようになります。

さて、水槽をセットしてから一ヶ月もすれば、だいぶ立ち上がってきますが、最終的にどのくらいの熱帯魚を入れるのかも大切です。これはひとえにフィルターの大きさによります。濾材には物理濾材(ゴミを取り除きます)、吸着濾材(脱色、脱臭に効果があります)、そして生物濾材(濾過バクテリアの住み家)があります。

物理濾材は水に溶けた有害物質は取り除けず、吸着濾材の効果は一時的です。そのため、いかに生物濾材をたくさん入れることのできるフィルターであるかが重要です。生物濾材を大量に入れることのできるフィルターであれば、極端な話、10リットルほどの水槽にメダカくらいの大きさの熱帯魚を100匹以上も入れることができます。ただし、注意しなくてはならないことがあります。特に酸素不足と硝酸塩については要注意です。

過密水槽の注意点

まずは酸素不足についてです。ほとんどの熱帯魚は水中に溶けている酸素を取り込んで呼吸をしています。ですが、過密な飼育環境では酸素はすぐになくなってしまい、熱帯魚たちは水面から口を出して口をパクパクし始めます。これは鼻上げと呼ばれる現象ですが、たくさんのネオンテトラなどが水面で鼻上げをしている様子はとても見ていられない光景です。このため、十分なエアレーションを行い、水と空気が触れる面積を大きくして、しっかりと酸素を供給してあげる必要があります。

そしてもうひとつ、過密な水槽には落とし穴があります。それは硝酸塩です。

大量のアンモニアや亜硝酸塩も優秀なフィルター内の濾過バクテリアによって、毒性の弱い硝酸塩に変えられます。しかし、硝酸塩は無害ではありません。蓄積すれば熱帯魚の免疫機能に障害を起こし、病気にかかりやすくなったりします。また、コケの増殖を促進し、これによって水草が弱れば、環境はますます悪くなっていきます。

熱帯魚のたくさんいる水槽には必然的にアンモニアの量も多くなりますし、その分だけ、アンモニアを元に作られる亜硝酸塩、そして硝酸塩も多くなります。つまり、熱帯魚の過密水槽では、この硝酸塩のたまるスピードがとても速いのです。

硝酸塩は水草の肥料にもなりますが、それは極めてわずかな量ですので、とても水換えなしに減らすことはできません。このため、熱帯魚の過密水槽ではできるだけ頻繁な水換えが求められます。また、濾材の汚れも速く、硝酸塩の温床にもなりやすいので、これもこまめにメンテナンスしなくてはなりません。

理想的な熱帯魚水槽

水槽にたくさんの熱帯魚を入れるのはにぎやかで楽しいものですが、それに伴って管理も大変になってきます。熱帯魚の飼育が苦痛にならないようにするためには、どのくらい水槽のメンテナンスに時間をとれるかということもよく考えてから熱帯魚の数を増やしていくのが大切です。

それほど大きくない水槽でも、熱帯魚と水草、濾過バクテリアの量にバランスが取れていれば、フィルターがなくても、ほとんど手間をかけずに長い期間、良い環境を維持することができます。

ごく小数の小さな熱帯魚に適切な量のエサを与えていれば、発生するアンモニアもごくわずかです。それを流木や砂の表面にいる濾過バクテリアが亜硝酸塩を経て硝酸塩へと処理していきます。発生するアンモニアがわずかですので、これが処理された硝酸塩の量も極めて少なく、また、このくらいの量の硝酸塩であれば、水草も肥料としてだいぶ吸収することができます。

このようなバランスの取れた環境づくりは、もともと日本では古くから行われてきたことです。日本ほど水質に恵まれていないヨーロッパで発展した近代的な熱帯魚飼育もとても理にかなった方法ですが、両方の良いところを取り入れることで、熱帯魚にとってより良い環境を作ってあげることができるのではないかと思います。

濾過バクテリアについて

熱帯魚を飼育していると水槽の中に有害な窒素酸化物が発生します。これを安全に処理してくれるのが濾過バクテリアです。ところが濾過バクテリアはセットしたばかりの水槽にはほとんどいません。この状態は環境がとても不安定で、熱帯魚にとっても危険です。そのため、この濾過バクテリアをいかに十分な数にまで殖やすかということが大切なのです。

水をきれいにしてくれる濾過バクテリアは、大気中や水草、すでに熱帯魚を飼育している水槽の砂利や濾材、流木や水の中など、あらゆるところにいます。これらはいろいろな種類がそれぞれ複雑に作用しあっていますが、中でも重要なのが、アンモニアを亜硝酸塩に変える濾過バクテリアと、亜硝酸塩を硝酸塩に変える濾過バクテリアです。

熱帯魚を飼育していますと、必ずアンモニアが発生します。これは熱帯魚にとって害がありますので、濾過バクテリアによって亜硝酸塩に変えてもらうのですが、亜硝酸塩もまた極めて毒性が強く、最も注意しなくてはならないものです。そのため亜硝酸塩はまた別の濾過バクテリアによって毒性の弱い硝酸塩に変えてもらわなくてはなりません。これを生物濾過と言います。

この特に重要なふたつの濾過バクテリアをいかにたくさん殖やすかが、水槽の立ち上げにおいては最も重要です。これら濾過バクテリアはわずかなアンモニアをもとに亜硝酸塩や硝酸塩を作り出しながら順を追って増殖していきますが、濾過バクテリアが十分な生物濾過が行える数になるには熱帯魚を入れてから数週間から一ヶ月くらいかかります。

このため、この間は熱帯魚を少なめに入れて、エサは絶対に残らないよう、すぐに食べきってしまう量だけを与えることが大切です。少なすぎると思われるかもしれませんが、これは熱帯魚を安全に飼育するためには特に注意したいポイントと言えます。

アクアリウムで話題にのぼる濾過バクテリアの働きはここまでですが、実際の生物濾過はここで終わりではありません。河川の水質浄化においては亜硝酸塩をチッ素に変える嫌気性細菌が極めて重要な役割を持っています。

自然の河川では嫌気性細菌によって亜硝酸塩はチッ素に還元されます。ここで亜硝酸塩が多すぎる場合には処理が追い付かず、亜硝酸塩の一部が硝酸塩になってしまいますが、硝酸塩をチッ素に還元するにはいったん亜硝酸塩に戻さなくてはならないため、より富栄養化(水が汚れた状態)を改善するのが難しくなります。

嫌気性細菌は酸素の少ない場所を好みます。このため濾過器などで水槽の隅々にまで酸素が行き渡ると嫌気性細菌が活動しなくなりますので、この場合はこまめな水換えにより硝酸塩を除去します。また、海水は硫黄分を多く含むため、海水魚の水槽では酸素の少ない場所から有害で悪臭のする硫化水素を生じやすい場合があります。

ところで自然のサイクルにおいてアンモニアや亜硝酸塩、硝酸塩などに含まれるチッ素を固定化できるかどうかも重要です。好気性バクテリアはチッ素を還元することも固定化することもできず、硝酸塩を生産しつづけることしかできません。このため、こうした濾過バクテリアは自然のサイクルから考えると短期的な処理能力しかないのです。

チッ素を固定化する代表的な生物はコケですが、コケの発生は水槽の美観を著しく損ねます。そのため、水槽内にチッ素を固定化できる様々な微生物による食物連鎖を作り上げることが、水槽を長期にわたり状態良く、しかも美しく維持するためのコツになります。

特に植物性プランクトンは水槽内で過剰になりやすいチッ素とリンを効率よく固定化してくれますが、たいていの場合、フィルターによって濾過されてしまうため、熱帯魚の水槽では共存の難しい生き物かもしれません。

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