ビーシュリンプについて

ビーシュリンプの世界

水槽

ビーシュリンプを飼育する上で困ったことが起きたら、このサイトを思い出してみてください。いくつかの基本的なポイントさえ押さえておけば、初めての方にも飼育や繁殖が手軽にお楽しみいただけるビーシュリンプについて、その魅力と技術の全てを包み隠さずお伝えいたします。

このサイトが、愛すべきビーシュリンプたちにとって、その小さな命をつなぐ一助となりますように……。

ビーシュリンプの種類について

ビーシュリンプ基礎知識飼育水槽保温器具フィルター底砂照明器具飼育と繁殖困ったときの対処法

初心者にも飼育のやさしいビーシュリンプの種類

ビーシュリンプと一日でも長く過ごし、そして次の世代をつないでいくための秘訣についてお話していきたいと思います。

くつろぎの空間を創る癒しの水槽

ビーシュリンプ

ビーシュリンプ
学名 Neocaridina sp
分布 中国
体長 2cm

美しい縞模様や、水草から水草はスーッと飛び移っていく振る舞いは、まさにビー(ミツバチ)シュリンプという名前にふさわしい小さな淡水エビです。小さな手足を一生懸命に動かして、いつもせわしなく動き回っている様子は見ていて飽きません。

近ごろはより色彩の華やかなレッドビーシュリンプの人気が高まっていますが、ビーシュリンプが持つこの種ならではの繊細で落ち着いた色彩は、ビーシュリンプの大きさや動きが加わると絶妙な魅力をかもしだします。

チェリーシュリンプ

チェリーシュリンプ
学名 Neocaridina sp
分布 台湾
体長 2cm

鮮やかな赤いボディが水草の緑にたいへん良く映え、人気の高いビーシュリンプの仲間です。色や模様こそビーシュリンプとは全く違いますが、形はそっくりです。

ビーシュリンプSPレッド

ビーシュリンプSPレッド
学名 Neocaridina sp
分布 改良品種
体長 2cm

ビーシュリンプから偶然によって生まれた突然変異で、紅白のコントラストが美しい淡水エビで、特にその白はまるで雪のような質感で、この種ならではの魅力です。

ビーシュリンプ飼育の基礎知識

このコーナーではビーシュリンプの故郷や流通など、ビーシュリンプを取り巻く背景について解説していきたいと思います。

ビーシュリンプはどこからやってくる?

今では誰もが楽しめるほどに普及しているビーシュリンプですが、もともとの生息地については実は謎に包まれています。アジアのどこかであるらしいのですが、その生息地はすでに開発によって消滅しているという情報もあり、長い年月を経た今となっては確かめる術もありません。

世界でおこなわれているビーシュリンプの養殖

私たちが飼育することのできるビーシュリンプは、その多くが海外や国内で養殖されたものです。非常に繁殖力が旺盛で、小さなスペースでも膨大な数のビーシュリンプを飼育することができるため、個人レベルでのブリーディングも盛んです。

ビーシュリンプは産地によっていくつかの系統があり、中国産、香港産、台湾産など、それぞれに色や模様も微妙に異なりますが、こうした原種に近いと思われる品種の多くは海外で盛んに養殖され、日本にも大量に輸入されてきます。

また、人気のレッドビーシュリンプは日本で作出された品種で、こちらは国内の有名なブリーダーが繁殖した美しい個体が一匹ごとにランク分けされて広く流通しています。

ビーシュリンプの価格

ビーシュリンプの多くは飼育を始めやすい手頃な価格で販売されていますが、今なお品種改良が盛んなレッドビーシュリンプは、模様ごとに様々な品種名がつけられ、一般のビーシュリンプよりも、やや高い価格がつけられています。

中でも極めて優れた種親を大量に保有している著名なブリーダーによって繁殖されたレッドビーシュリンプは、同じ品種でも通常のレッドビーシュリンプより、ずっと高額で取引される傾向にあり、時には一般のブリーダーが養殖したレッドビーシュリンプの数十倍もの価格になることもあります。

省スペースで大量に繁殖させることができるビーシュリンプの養殖は一部で人気のビジネスとなっていますが、その旺盛な繁殖力ゆえ、これまでにも新しい種が輸入されたり新品種が登場しても、瞬く間に価格が下がっていきました。

このため、特にレッドビーシュリンプの繁殖を生業としているブリーダーは、たゆまない日々の努力と独自の創意工夫によって、常に最高の個体を送り出し続けています。この終わりなき困難な作業も、ひとえにビーシュリンプに魅せられたブリーダーだからこその情熱がなせるものに他なりません。

このようにブリーダーが(時には当事者はそれとは気付かずに)地道な努力によって作出した素晴らしいレッドビーシュリンプの新品種をいち早く集めていくのもビーシュリンプの楽しみ方のひとつではありますが、ビーシュリンプが持つ本質的な魅力は原種も改良品種も変わりなく、まずは一匹一匹を愛情を持って飼育してあげて欲しいと切に願ってやみません。

自然界のライフサイクルをコンパクトに凝縮したレガーロ水槽の浄化システム
自然界のライフサイクルをコンパクトに凝縮したレガーロ水槽の浄化システム

ビーシュリンプの飼育に必要な器具

ビーシュリンプ飼育に必要な器具は実は意外に少なくて済みます。むしろ器具に頼った飼育はうまくいきませんので、ここでは不必要な器具を省いて揃えるべき飼育器具の種類と選び方について解説していきたいと思います。

ビーシュリンプの水槽について

ビーシュリンプはわずか2センチの淡水エビです。そのため、5リットルもの水槽があれば、飼育にも繁殖にも問題ありません。むしろ大きすぎる水槽では、どこにいったかわからなくなってしまう可能性もありますので、数匹の飼育であれば、大きくても20リットルくらいまでの水槽が適しています。

水草水槽でのビーシュリンプ飼育

ビーシュリンプは水槽に生えたコケを食べてくれるため、水草水槽に入れておくと水草に糸状のコケが生えにくくなります。もちろんビーシュリンプはたいへん小さい生き物ですので、一匹のコケ取り能力はごく小さなものですが、たくさんの数を入れてエビ群団が結成されれば目に見えてコケが減っていく様子を実感することができるようになります。

ところで水草水槽にビーシュリンプを入れる場合には、絶対に注意しなくてはならないことがあります。それは水草に付着していることのある残留農薬です。

水草は主に海外のファームで栽培されていますが、このとき、より早く成長するように、葉は水上に出た状態で管理されています。そのため、水草の葉が害虫に食べられてしまわないように農薬が使われていますが、実はビーシュリンプは、この農薬に極めて弱いのです。熱帯魚にとっては何でもないようなわずかな量の残留農薬であっても、ビーシュリンプには致命的で、ものの数時間で一匹残らず全滅してしまうほどです。

こうしたことから、ビーシュリンプの入っている水槽に新しい水草を入れる場合には、よくよく注意しないと、一晩のうちに全滅といった事態が簡単に起こります。これはかなりの高確率でしばしば起こる失敗ですので、とにかく「ビーシュリンプと言えば水草には要注意!」ということがすぐ頭に思い浮かぶくらい、徹底しておくべきポイントです。

このことはビーシュリンプを飼育していく上では最も大切な、いわば常識で、これを知らずにいるのは常に爆弾を抱えて飼育しているのと同じことです。

愛すべきビーシュリンプたちのためにも、願わくば皆さんの周りでビーシュリンプを飼育されている方がおられましたら、このことをぜひ伝えていただきまして、ビーシュリンプを飼育される全ての方の常識となることを願っています。

小型水槽でのビーシュリンプ飼育

小さな水槽はわずかなスペースでも置くことができるので、置き場所も見つけやすく、また、軽くて扱いやすいので女性の方や初心者の方でも手軽に管理することができます。水量が少ないので水換えのために準備する水の量も少なくてすみ、わずかなワット数の保温器具でも水温を保てるため、特に冬場の電気代もセーブできます。水族館のように、種類ごとの小さな水槽をいくつも置いて楽しむという贅沢な飼育も、小型水槽なら手軽に実現することができます。

とはいえ、もちろん小型水槽も良いことばかりではありません。水量が少ないため水が傷みやすく、少量ではありますが定期的な水換えは欠かせません。むやみに濾過器など入れようものなら、たちまち狭くなってしまいますし、たいていの濾過器は水流も小さなエビたちにとって強力すぎるものとなってしまうでしょう。

また、水量が少ないと水温の変化も急激になりがちですので、特にビーシュリンプは暑さにはたいへん弱いため、真夏の猛暑日には注意してあげてください。

ビーシュリンプは正しく管理されている限り、たとえ小さな水槽であっても元気に暮らしてくれます。わずかなスペースで楽しむことができることも、ビーシュリンプのたいへん大きな魅力のひとつと言えるでしょう。

レガーロ熱帯魚水槽(ガラス製)
癒しの熱帯魚水槽(ガラス製)

キューブ
ミニ薄型水槽キューブ(アクリル製)

水槽の種類

ビーシュリンプに適した水槽には主にガラス製とアクリル製があります。あとあと後悔しないためにも、用途に合わせた水槽を選びましょう。

ガラス水槽

透明度が高くキズもつきにくいガラス製の水槽は、ビーシュリンプの繊細な美しさを存分に楽しむのに向いています。また、特に写真撮影には理想的な水槽と言えるでしょう。言うまでもなく落としたり強くぶつけたりすれば破損しますし、破片も鋭利で危険ですので、取り扱いには十分な注意が必要です。20リットルくらいまでなら軽くて取り扱いも楽なので、おすすめです。

アクリル水槽

鑑賞には全く問題のない透明度を持ち、驚くほど軽く丈夫で衝撃にも強いアクリル水槽は大きめの水草水槽にぴったりです。ただしキズがつきやすいので、特にコケ取りはアクリル水槽にも使える柔らかい素材である必要があります。ガラスに比べて加工が容易なため、デザインの優れたユニークな形状の水槽も見受けられ、特に薄型水槽などはビーシュリンプを省スペースで飼育するのに便利です。

ビーシュリンプの保温について

冬場のビーシュリンプ飼育に欠かせないのが保温器具です。どちらかというと寒さには意外に強いビーシュリンプですが、10度を下回るような環境では生存も難しくなります。そのため、冬季には保温器具で水槽の水を温めてあげる必要がありますが、これはヒーターとサーモスタットを組み合わせて使用することで誰でも手軽に解決できますし、むしろ、高温にこそ弱いビーシュリンプにとっては、温度調節の簡単な冬季の方が飼育を始めるには向いています。

保温器具の種類

ビーシュリンプ用の保温器具は特殊な場合を除いて水中ヒーターを使うのが一般的です。ここでは水中ヒーターとサーモスタットの、それぞれの機能と役割を解説したいと思います。

水中ヒーター

水中でのみ使用することのできる熱帯魚用のヒーターです。主に棒状で、特に中心部は高温になるため、絶対に触れてはなりません。生体の火傷防止に専用のヒーターカバーもありますが、ビーシュリンプの場合は小さすぎて中に入り込んでしまい、無意味なばかりか、むしろ危険にさらされてしまう恐れもありますので、ビーシュリンプの飼育にはヒーターカバーは不要です。ところで水中ヒーターの寿命は一年ほどなので、安全のためにも秋には忘れずに買い換えておきましょう。

ヒーターは使用する水槽の大きさによって適切なワット数を選択する必要があります。5リットルくらいの小さな水槽なら10Wのヒーターでも問題ありませんし、20リットルの水槽であれば50Wくらいを目安にすると良いでしょう。また、ヒーターは熱を出すだけの器具なので、そのまま使うと思いがけず高温になってしまうため、大変きけんです。ヒーターを使う場合は必ずサーモスタットにつなげて使います。

サーモスタット

ヒーターによる水温の上がりすぎを防ぐ制御器具がサーモスタットです。バイメタル式と電子式があり、バイメタル式は安価ですが、二層の金属板が劣化すると故障して水温が異常に高くなってしまう場合があるので、できるだけ電子式を選ぶことをおすすめします。ビーシュリンプは20度前後を好みますので、細かく温度設定のできるサーモスタットは、より適切な飼育のためには便利な器具です。

オートヒーター

オートヒーターはヒーターとサーモスタットが一体となった便利な器具です。温度は固定のため変えられませんが、ヒーターと電子サーモスタットを購入するよりもはるかに安く、水に入れてコンセントを入れるだけで使えるので設定ミスの心配もないという、たいへん便利な保温器具です。

だいたい26度で設定されているものが多いのですが、ビーシュリンプは熱帯魚よりも低い温度を好むため、金魚やメダカ用の20度くらいに設定されているオートヒーターを選ぶと、より適温に近い環境で飼育することができるでしょう。

ビーシュリンプの濾過について

ビーシュリンプを飼育していると水槽の中には次第に窒素酸化物が蓄積してきます。窒素酸化物のうち亜硝酸塩は特に毒性が強く、これをいかに自然の河川と同様の仕組みで速やかに毒性を弱めていくかがビーシュリンプの安全な飼育のために重要で、そのために必要となるのがフィルター(濾過器)なのです。

フィルターは水をキレイにしてくれる濾過バクテリアにとって居心地のよい住み家を提供し、より多くの濾過バクテリアの力を借りて水を浄化する仕組みになっています。これを生物濾過と言います。これがビーシュリンプ飼育において、濾過の最たる機能と言えます。

また、水中を漂うゴミなどを目の細かい網などでこし取る物理濾過や、水を循環することによりヒーターで温められた水を水槽のすみずみにまで行き渡らせたり、大気との接触面積を大きくすることで効率的なガス交換(二酸化炭素の放出と酸素の取り込み)を行います。

フィルターの種類

フィルターほど種類によって一長一短なものもありません。エアー式は安価ですが動作音や振動が大きく、モーター式は高価なものであれば静かですが小型水槽には使えないなど、それぞれの特徴をよく理解した上で選択する必要があるでしょう。中にはビーシュリンプに不向きなフィルターもありますので、購入の際にはあらかじめ種類と仕組みを理解しておく必要があります。

外掛け式フィルター

小型水槽に用いられることの多いフィルターです。安価で入手しやすいですが濾過面積が小さく、一ヶ月もすると極端に濾過能力が低下しますので、こまめな濾材の交換など定期的なメンテナンスが重要です。吸水口には専用のスポンジを取り付けられるようになっているものもありますので、できるだけそうした製品を選ぶようにすると、ビーシュリンプが濾過器の中に吸い込まれてしまったり、あるいは自らフィルターの中に入り込んでしまうといった事故も防げるでしょう。

水中フィルター

小型モーターで水を循環するフィルターです。大きさの割には濾過面積が大きく浄化能力も安定しています。本体を水槽の中に入れる必要があるため、小型水槽に入れると、かなり狭くなったように感じてしまう場合があるかもしれません。また、モーター部は多少の熱を発し、特に夏場には暑さに弱いエビにとって生命を脅かすことさえ起こりかねませんので、使用の際には水温の管理だけは確実に行ってあげることが大切です。

上部式フィルター

水槽の上部に載せて使用するフィルターです。上部フィルターを取り付けるには一般的に45センチ以上の水槽が必要ですが、音も静かで濾過能力も高く、安価でメンテナンスも簡単という優れたフィルターです。ただし、基本的に比較的水量のある水槽に向いたフィルターで、吸い込み口も大きいため、ビーシュリンプには不向きと言わざるを得ません。

底面式フィルター

水槽の底に敷き、底砂を通した水をエアーで汲み上げて循環させるフィルターです。底砂を濾材としているため濾過能力は高く、ビーシュリンプの赤ちゃんでも吸い込まれる恐れがないため、特に繁殖には適したフィルターです。

底面フィルターは掃除の不便さが最大の欠点です。メンテナンスの際には水槽内の全てを取り出さなくてはならず、必然的に作業量は多くなってしまいます。ただし、ビーシュリンプはあまり水を汚しませんし、日頃からこまめに少量の水換えを行っていれば、それほど頻繁に掃除をしなくても長いあいだ安定した環境を維持できますので、ビーシュリンプにとっては好ましいフィルターのひとつと言えるでしょう。

外部式フィルター

水槽の外部に設置する大型のフィルターで、強力なモーターにより大型水槽に使用しても十分な濾過能力を発揮します。小さな水槽では水流が強くなりすぎるため、大型水槽向きのフィルターと言えます。本体を水槽より低い位置に設置する必要があるため、水槽の配置などはフィルターの置き場所をあらかじめ考慮した上で決めておく必要があるでしょう。

外部式フィルターを小さな水槽に使用しますと、ビーシュリンプにとってはかなり強い水流になりますが、ウィローモスなどのしがみつきやすい水草を多く入れてあげることで、ある程度は早い流れであっても状態良く飼育することは可能です。この高い濾過能力は魅力ですので、可能であれば試してみる価値はあります。ただし、稚エビはことごとく吸い込まれてしまいますので、繁殖には向きません。

スポンジフィルター

エアーポンプで空気を送るタイプのフィルターですが、濾材に特殊なスポンジを使用しているのがポイントです。上手く使えば高い濾過能力が期待できますし、稚エビが吸い込まれる心配もなく、掃除も簡単、水流の強さもエアー量で調整できるなど、ビーシュリンプにとっては最も理想的なフィルターと言えます。

ビーシュリンプの底砂について

底砂はビーシュリンプを飼育している限り水中に絶えず増え続ける窒素酸化物の毒性を速やかに弱めてくれる濾過バクテリアの住み家となります。水草を植えるにも重要ですし、底砂の色や大きさによってレイアウトの雰囲気も全く変わってきます。また、底砂の中には水質を変化させるものがあります。底砂は他にもビーシュリンプが脱皮をする際の足がかりにもなりますので。適切な底砂を用いることができれば、より快適な環境を与えてあげることができるでしょう。

ビーシュリンプ
クリスタルサンド(人工砂)とビーシュリンプの仲間たち

底砂の種類

観賞魚用に使われる底砂は材質によってPHや硬度を変化させるものがありますので、中にはビーシュリンプと相性が良くない場合もあります。ここではそんな話も織り交ぜながら、底砂の種類について解説していきたいと思います。

砂利

熱帯魚水槽の底砂として最もポピュラーで古くから使用されているのが砂利です。ひと口に砂利と言っても、粒の大きさや色合い、質感も様々で、好みによって選んでも差し支えないでしょう。砂利は基本的に水質に及ぼす影響の少ない底砂ですが、鉄分を多く含んだものや、硬度を上げるものなど、石質によっては多少の水質変化を及ぼす場合もあるようです。

サンゴ砂

海水魚水槽にはなくてはならない白い底砂です。主にサンゴの骨格で出来ており、成分は石灰質です。このため、硬度を上げると共にPHをアルカリ性に傾ける性質があります。水質を変化させる作用が強いため、ビーシュリンプの水槽にはあまり用いない方が無難です。

ソイル

ソイルは土で作られた砂利で、池や沼の底に近い酸性土壌を作り出します。石質の砂利に比べて軽く柔らかく、水草の根を傷つけることもありません。土壌だけでなく水質も酸性の軟水に傾けるので、多くの水草にとって理想的な底砂と言えるでしょう。使用していくうちに少しずつ崩れてきますし、水草も土壌に含まれる微量元素を吸収しますので、頃合いをみて新しいソイルと入れ替えてあげます。品質によっては極端なPHの低下を招く場合がありますので、ビーシュリンプ水槽の底砂として使うのであれば、購入の前によく確認する必要があります。ビーシュリンプとも良くマッチするたいへん美しい底砂ですが、いずれにしても多少くせのある底砂ですので、初心者の方は避けておいた方が無難かもしれません。

天然石水槽
溶岩サンドを使用した天然石水槽

溶岩サンド

多孔質の濾材によく似た構造を持つ、極めて濾過能力の高い理想的な底砂で、自然の川底のような雰囲気の水槽を作りたい場合にはうってつけです。

たくさんの微細な窪み(くぼみ)があるため、ビーシュリンプがとてもつかまりやすく、歩きやすい上に脱皮時の足がかりとしても理想的な底砂のひとつです。

人工砂

色とりどりのガラスやプラスチック、セラミックなどで作られた美しい人工砂も古くから使われています。自然には存在しない底砂ですが、実は水質に影響を与える心配がないという点で、あらゆるビーシュリンプに安心して使用することのできるというメリットもあります。

ガラスなど、材質によっては、ほとんど濾過能力の期待できないものもありますが、軽いおプラスチック製の人工砂であれば、砂をほじくりかえすのが大好きなビーシュリンプにとって嬉しい環境となるでしょう。

ビーシュリンプの照明について

ついつい後回しにされてしまいがちな照明器具ですが、光は水草にとって、とても大切なものです。また、適度な明るさによってほどよく生えたコケは、ビーシュリンプのおやつとなります。適切な照明器具によって美しく浮かび上がるビーシュリンプの姿は、飼育の喜びを何倍にもしてくれますし、愛情もいっそう深まって、ますますメンテナンスにも力が入るというものです。その結果、更に体調の良くなったビーシュリンプは、より愛らしい姿で応えてくれたり、繁殖によって稚エビたちが顔出したりといった好循環が生まれてきます。照明は単に明るくなるという器具ではなく、人とエビをより深くつないでくれる大切な器具なのです。

照明器具の種類

ここでは水槽に使われる照明器具の種類について解説してみたいと思います。なお、蛍光灯には周波数の違いによって、50Hz用と60Hz用に分かれている製品があり、このような製品を購入する場合は、あらかじめ規格を確認しておく必要があります。

一灯式蛍光灯

シンプルで安価な蛍光灯です。蛍光管はひとつだけなので、特に水深のある水槽では暗く感じます。水草水槽にはあまり向きません。

くつろぎの空間を創る癒しの水槽
ハロゲンランプの照明を使用した熱帯魚水槽の例

多灯式蛍光灯

複数の蛍光管を備えた明るいライトです。水深の低い小さな水槽では光量が強すぎてコケの大発生を招いてしまう場合もありますので、購入の前には本当にそれだけの光量が必要かどうか、よく検討してみるべきでしょう。

LEDライト

あまり熱を持たず電球の寿命も極めて長いLEDを採用したライトです。LEDは特定の波長しか出さない性質があるため、蛍光サンゴの育成などに使われることの多いライトですが、複数の色を組み合わせて熱帯魚水槽にも使えるようにした製品も開発されています。LEDは色によって植物の育成に極めて高い効果のあることが確認されており、水草育成用などとして今後の製品開発に期待のかかるところです。

ハロゲンランプ

LEDライトとは対照的な性質を持ったライトで、高い熱を持ち、電球の寿命も短いですが、単波長であるLEDはもとより、三波長である蛍光灯と比べても、はるかに深い輝きを持っています。ハロゲンランプの照明による、その自然で温かみのある光が浮かび上がらせる光景は、あたかも木洩れ日を浴びた美しい川底を覗いているかのような美しさです。

ビーシュリンプの飼育と繁殖

ビーシュリンプはちょっとしたコツさえ知っていれば、誰にでも簡単に飼育と繁殖を楽しむことができます。ここではそのポイントについて解説してみたいと思います。

ビーシュリンプ
ウィローモスとレッドビーシュリンプ

エサ

ビーシュリンプは草食傾向が強く主に微細なコケなどを食べています。そのため、ビーシュリンプの数が少なければマリモのようなものからエサを供給することによって、水の汚れを最小限に抑えての飼育もできます。

また、ビーシュリンプの数が多ければ専用のエサを与えるのも成長促進や繁殖に効果があります。

水温

ビーシュリンプは低温を好み、高温を嫌う傾向にあります。そのため、20度から25度くらいで飼育すれば問題はありません。冬季は保温器具を用いることで簡単に温度を調節することができますが、問題は夏場の高温です。

特に水量の少ない小さな水槽では日中に驚くほど水温が上がってしまう場合もありますので、できるだけ涼しいところに置いてあげる事が大切です。なお、熱帯魚用のファンも気化熱によって水温の上昇を抑える働きがあるため、少しですが効果があります。

薬品類

とにかくありとあらゆる薬品に弱いビーシュリンプの飼育においては、使用する水道水にもできるだけ余計な物は入れない方が無難です。水道水に含まれる塩素はもちろん完全に除去しなくてはなりませんが、中和剤も色々な効能があるものよりも塩素中和だけを行うシンプルなものが良いでしょう。

熱帯魚用の魚病薬はもちろんのこと、水草用の肥料や水質調整剤であっても、相性によっては最悪の結果につながる場合もありますので、くれぐれも十分な注意を要します。

なお、入荷してまもない水草には残留農薬が含まれる場合が多く、これはたとえわずかであってもビーシュリンプを簡単に全滅させてしまいますので、とりわけ気をつけなくてはなりません。いずれにしても熱帯魚が平気だからといってビーシュリンプを入れてしまうのだけは避けるべきです。

繁殖について

ビーシュリンプはオスとメスを状態よく飼育しているだけで簡単に繁殖してくれるのも大きな魅力です。ビーシュリンプをペアで購入するのは困難ですので、繁殖のためには何匹かまとめて購入するか、大きく成長し卵を抱えた抱卵個体を購入することになります。なお、抱卵個体はそうでない個体と比べて、しばしば何倍もの価格がついていたりします。

繁殖に適した環境としては、ウィローモスなどが十分に繁り、コケなどが適度に生えているような状態です。こうした水槽であれば、ただ普通に飼育しているだけで自然繁殖し、生まれた稚エビは微細なコケなどを食べながら勝手に成長していきます。なお、ほとんどの濾過器はビーシュリンプの稚エビを吸い込んでしまうため、繁殖を目的とするのであれば底面式フィルターかスポンジフィルター、または吸い込み口にスポンジを取り付けた外掛け式フィルターなどを用いるようにします。

困ったときの対処法

ビーシュリンプを飼育していて困ったときの解決方法をお伝えしていきます。

水が白く濁る

これは水槽内に濾過バクテリアが少ないときに起こりやすく、水槽内に有害な物質が増加している場合が多く、このような時にエサを与えるのは大変きけんです。

こうした場合の対処法としては、まず水がかなり白く濁っている場合は水槽をセットしなおして、水も全部取り替えます。うっすらと濁っているような場合は、2〜3日のあいだエサを与えずに様子をみます。この際、観賞魚用の竹炭を入れておくと、かなりの効果を実感することができるでしょう。

なお、流木を入れると水が茶色になってきます。これは流木から腐食酸などが溶出するためで、水が真っ黒にでもならない限り害はありません。

ビーシュリンプの元気がない

まずは水温に注意してみてください。ビーシュリンプは変温動物ですので、水温がそのまま体温になります。そのため、急激に水温が下がると水底に横たわってしまう場合があります。こうなってしまった場合、ゆっくりと水温を上げることにより再び元気に泳ぎ出すことも多いので、例え水底に横たわっていたとしても慌てずに温かい部屋に移してあげましょう。なお、お湯などを入れて急激に温度をあげるようなことは絶対にしてはなりません。逆に温度が28度を越えると生命の危機にさらされることになりますので、その際はできるだけ涼しくしてあげてください。

温度に問題がないようでしたら、次は水について考えてみましょう。水質は大きくPHと硬度に分けられます。PHは酸性かアルカリ性かの指標で、硬度は水中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量です。いずれにしても水道水を使っている場合はほぼ中性の軟水ですので、ビーシュリンプにとっては問題とはなりませんが、井戸水などを用いる場合は、念のためPHと硬度を測っておくと安心です。

さて、水道水から出てすぐの水にPHや硬度の問題がなかったとしても、水質はビーシュリンプを飼育しているうちに次第に変化してきます。ビーシュリンプの排出するアンモニアが変化した亜硝酸塩や硝酸塩が蓄積してくると、これによって徐々にPHが下がる(酸性になる)場合があります。これに酸素不足が加わると二酸化炭素によって更にPHは下がり、これもビーシュリンプを弱らせてしまう原因になります。また、それ以前に、ビーシュリンプは熱帯魚に比べて亜硝酸塩や硝酸塩にとりわけ弱く、特に亜硝酸塩の増加はビーシュリンプの生命をただちに脅かすので十分に注意する必要があります。

これらの問題を解決する一番の方法は水換えです。定期的な水換えによって亜硝酸塩や硝酸塩は減りますし、水道水に含まれる微量元素は水草の栄養となり水草も元気になります。活力を得た水草は水中の有害物質を肥料として吸収してくれたり、光合成がいっそう活発に行われることによって生み出された酸素はPHの下がりすぎをくいとめ、また、十分な酸素は濾過バクテリアを元気にすると共に、多くの病原菌を撃退します。

このようにいかに自然のサイクルを上手に作り上げていくかがビーシュリンプ飼育のポイントになります。良質なエサと定期的な水換えによって底砂の有益なバクテリアを育てていけば、やがて調和した水槽は半年以上も少量の水換えだけで良い状態を保ち続けられるようになることもあります。

ビーシュリンプ基礎知識飼育水槽保温器具フィルター底砂照明器具飼育と繁殖困ったときの対処法