熱帯魚を飼育する上で困ったことが起きたら、このサイトを思い出してみてください。30年にわたる熱帯魚の飼育と繁殖の実践経験から、大切な熱帯魚に今できることをしてあげるためのヒントをお伝えしていきたいと思います。
このサイトが、言葉にできないほどの幸せと喜びを与えてくれた熱帯魚たちへの、せめてもの恩返しとなりますように……。
熱帯魚飼育の基礎知識
|熱帯魚|基礎知識|飼育水槽|保温器具|フィルター|底砂|照明器具|水槽の立ち上げ|困った時の対処法|
このコーナーでは熱帯魚の故郷や流通など、熱帯魚を取り巻く背景について解説していきたいと思います。
熱帯魚はどこからやってくる?
世界には様々な熱帯魚たちが生息していて、日本の熱帯魚ショップにも、主に熱帯アジア、南米、アフリカ、オーストラリアなどから、たくさんの熱帯魚が輸入されてきます。
また、現在ではこうした野生採取個体よりもむしろ、養魚場で人の手により卵から大切に育てられた養殖熱帯魚が一般的です。人に育てられた熱帯魚は病気や寄生虫の心配も少なく、種類によっては野生個体よりも美しい場合もあります。
こうした熱帯魚の養殖が、時にはビーシュリンプやアカヒレのように野生では絶滅してしまったとされる血統の保存に貢献する場合もあります。
世界でおこなわれている熱帯魚の養殖
養殖が行われているのは日本だけでなく、タイ、シンガポール、台湾などでは、需要の多い安価で丈夫な熱帯魚が養殖され、ドイツやオランダなどでは飼育繁殖に特別な技術を要する種類(中には野生では絶滅してしまった種類もいます)を中心に、高価でデリケートな熱帯魚の養殖が行われています。
いま私たちがデパートやペットショップで見ることのできる熱帯魚のほとんどは、こうした世界の熱帯魚養魚場から様々な流通ルートに乗って、はるばる日本へ輸入されてきた熱帯魚たちなのです。
熱帯魚の価格
熱帯魚の価格を決めるもっとも大きな要因は輸送費です。特に野生の採取個体では日本から遠い国の熱帯魚ほど高価ですし、袋にたくさん詰め込んでも生き延びることのできる丈夫な熱帯魚は、同じ輸送費でもたくさん運べるので安くなります。
また、もちろんなかなか採れない種類に需要があれば高くなりますし、滅多に採取できない種類でも需要がなければ同じ値段でまとめて送られてきます。特にカージナルテトラのような野生個体を中心に流通している熱帯魚には、頻繁に様々な珍種が混じってくるので、そうした珍しい熱帯魚を注意深く探してみるのも熱帯魚飼育における楽しみのひとつと言えます。
自然界のライフサイクルをコンパクトに凝縮したレガーロ水槽の浄化システム
熱帯魚の飼育に必要な器具
熱帯魚飼育で用いる器具の仕組みについて知っておくことは、様々な飼育上の問題を解決していく上でとても役立ちます。ここでは飼育器具の種類と選び方について解説していきたいと思います。
熱帯魚の水槽について
熱帯魚を飼育するための水槽を選ぶ上で最初に考えなくてはならないのが、水槽の大きさです。もちろん飼育したい熱帯魚が大きければ大きな水槽が必要ですが、それだけではありません。小さくても活発に泳ぐ熱帯魚は広い水槽が必要ですし、大きくてもあまり動かない熱帯魚であれば、大きさの割には小さな水槽で飼育できる場合もあります。
ただし注意しなくてはならないのは、例えばナマズなどの夜行性熱帯魚の場合、昼間は石のように動かなかったとしても、夜に人が寝静まった頃、暗闇の中で活発に泳ぎ回ることがよくあるのです。活発どころか、時には激しく暴れ回ることも少なくありません。特に細長く扁平な大型ナマズは大河の激流域に生息していたりするため、泳ぐ力も凄まじく、その突進力は時に水槽を破壊してしまうほどです。
大型ナマズ類は成長も早く、数年のうちに飼い主ほども巨大化する可能性がありますので、幼魚がどんなに可愛くても将来をよく考えて飼育を始める必要があるでしょう。
大型水槽での熱帯魚飼育
大きな水槽は水質が悪化しにくいので、デリケートな種類の熱帯魚は、たとえ小さくても大きめの水槽での飼育が向いています。また、見た目にも大型水槽にびっしりと水草を植えると壮観ですし、中に入れる生き物によっては自然繁殖という思わぬ楽しみも味わえるでしょう。
ところで大型水槽を置くにはいくつか気をつけなくてはならないことがあります。まずその重さです。60センチの水槽でさえ水を入れると60キロにもなり、水槽の大きさがひとまわり大きくなるだけで、その重さは倍ほどにもなる場合があります。設置場所に十分な強度がないと大きな事故にもつながりますので、置き場所にはくれぐれもご注意ください。いずれにしても水槽の大きさにあった水槽専用の台を用意する必要があります。
大型水槽に水草を植える場合、相当な量を買い込んできたつもりでも、実際に植えてみると半分にもならなかったということもよくあります。大型水槽で水草いっぱいのレイアウトを作る場合は、底床肥料の添加によって爆発的に成長するヘテランテラのような水草を大量に用いるか、多めに水草を購入するようにすると良いでしょう。同様にネオンテトラなどを群泳させてみたい場合にも、ショップの水槽にいるネオンテトラを全部まるごと購入するくらいの勢いが必要です。
ちなみに水槽が大きいからといって、たくさんの種類を植えてしまうと、雑然とした印象になってしまいます。特に初めての方は、例え水槽が大きかったとしても、同じ種類の水草をたくさん植えた方がキレイなレイアウトを作りやすいでしょう。
小型水槽での熱帯魚飼育
小さな水槽はわずかなスペースでも置くことができるので、置き場所も見つけやすく、また、軽くて扱いやすいので女性の方や初心者の方でも手軽に管理することができます。水量が少ないので水換えのために準備する水の量も少なくてすみ、わずかなワット数の保温器具でも水温を保てるため、特に冬場の電気代もセーブできます。水族館のように、種類ごとの小さな水槽をいくつも置いて楽しむという贅沢な飼育も、小型水槽なら手軽に実現することができます。
とはいえ、もちろん小型水槽も良いことばかりではありません。水量が少ないため水が傷みやすく、わずかなエサの残りが熱帯魚にとって深刻な事態につながります。特にエサついては信頼できるメーカーの質の良いエサを少なめに与えてあげるという、熱帯魚飼育における重要なポイントをより徹底することが肝心です。
また、水量が少ないと水温の変化も急激になりがちですので、特に秋口の急な気温低下や真夏の猛暑日には注意したいものです。他にも生長の早い水草を入れてしまうと、すぐに水槽が伸びすぎた水草で窮屈になってしまったり、熱帯魚同士の相性が悪い組み合わせだった場合は逃げ場を見つけられずにボロボロにされてしまうこともあります。
プチ水槽 | 熱帯魚水槽 | |
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水槽の種類 | プチ水槽 |
熱帯魚水槽 |
水の量 | 300ml | 5000ml |
エサの与え過ぎ | すぐに水換えが必要。 | 水が濁るなどの異変が起きたらエサやりを一時中止。 |
水温 | 急激に変化。 | ゆるやかに変化。 |
水草 | 小さな水草しか入らず、弱いお魚が隠れられません。 | 適度な量の水草は弱いお魚の逃げ場になります。 |
小さな水槽で水草レイアウトをする場合は、葉の大きな水草を植えると大味な印象になります。細かくて小さな葉を持つ水草を選ぶと繊細なミニチュアレイアウトになるでしょう。水草の種類はできるだけ少なめにするのがコツです。また、生長が遅く小型で丈夫なアヌビアス・ナナは小型水槽にとって理想的な水草のひとつです。
水槽の種類
熱帯魚水槽には主にガラス製とアクリル製があります。あとあと後悔しないためにも、用途に合わせた水槽を選びましょう。
ガラス水槽
透明度が高くキズもつきにくいガラス製の水槽は、小型熱帯魚の繊細な美しさを存分に楽しむのに向いています。また、特に小型魚撮影には理想的な水槽と言えるでしょう。ガラス水槽は大きくなるほど急激に重くなり、大型熱帯魚の突進や尾ひれで叩かれた場合などの衝撃にも弱く、破片も鋭利で危険なため、大型水槽には向かない水槽と言えます。
アクリル水槽
鑑賞には全く問題のない透明度を持ち、驚くほど軽く丈夫で衝撃にも強いアクリル水槽は大型熱帯魚の飼育にピッタリの水槽です。良いことずくめのアクリル水槽ですが、キズがつきやすいので、特にコケ取りはアクリル水槽にも使える柔らかい素材である必要があります。また、通常の鑑賞では問題ありませんが、写真撮影のためフラッシュをたくと、表面の細かいキズに反射して白く写ってしまう場合があります。大きな水槽では水を入れると少したわみますし、あまり撮影に向いた水槽ではないかもしれません。
熱帯魚の保温について
冬場の熱帯魚飼育に欠かせないのが保温器具です。世界の熱帯地域に分布する熱帯魚を飼育する場合は、どんなに寒くても20度以上の水温を保ってあげなくてはなりません。現在ではこうした保温器具の機能も格段に進歩し、誰でも気軽に熱帯魚飼育を楽しむことができるようになりました。
保温器具の種類
熱帯魚用の保温器具は特殊な場合を除いて水中ヒーターを使うのが一般的です。ここでは水中ヒーターとサーモスタットの、それぞれの機能と役割を解説したいと思います。
熱帯魚用ヒーター
水中でのみ使用することのできる熱帯魚用のヒーターです。主に棒状で、特に中心部は高温になるため、絶対に触れてはなりません。ナマズや肺魚などはよく火傷しますので、こうした動かない熱帯魚を飼育する場合は、必ずヒーターカバーをつけます。熱帯魚用ヒーターの寿命は一年ほどなので、安全のためにも秋には忘れずに買い換えておきましょう。
熱帯魚用ヒーターは使用する水槽の大きさによって適切なワット数を選択する必要があります。5リットルくらいの小さな水槽なら10Wのヒーターでも問題ありませんし、60センチの水槽であれば200Wくらいを目安にすると良いでしょう。また、熱帯魚用ヒーターは熱を出すだけの器具なので、そのまま使うと思いがけず高温になってしまうため、大変きけんです。ヒーターを使う場合は必ずサーモスタットにつなげて使います。
熱帯魚用サーモスタット
熱帯魚用ヒーターによる水温の上がりすぎを防ぐ制御器具がサーモスタットです。バイメタル式と電子式があり、バイメタル式は安価ですが、二層の金属板が劣化すると故障して水温が異常に高くなってしまう場合があるので、できるだけ電子式を選ぶことをおすすめします。
熱帯魚には20度前後を好む種類から30度近くを好む種類まで様々ですので、種類に合わせて細かく温度設定のできるサーモスタットは便利な器具です。白点病になった場合などでも、水温を高めに設定するだけで治ってしまう場合もあります。
熱帯魚用オートヒーター
オートヒーターはヒーターとサーモスタットが一体となった便利な器具です。温度は固定のため変えられませんが、ヒーターと電子サーモスタットを購入するよりもはるかに安く、水に入れてコンセントを入れるだけで使えるので設定ミスの心配もないという、たいへん便利な保温器具です。
熱帯魚の濾過について
熱帯魚を飼育していると水槽の中には次第に窒素酸化物が蓄積してきます。窒素酸化物のうち亜硝酸塩は特に毒性が強く、これをいかに自然の河川と同様の仕組みで速やかに毒性を弱めていくかが熱帯魚の安全な飼育のために重要で、そのために必要となるのが熱帯魚用フィルター(濾過器)なのです。
フィルターは水をキレイにしてくれる濾過バクテリアにとって居心地のよい住み家を提供し、より多くの濾過バクテリアの力を借りて水を浄化する仕組みになっています。これを生物濾過と言います。これが熱帯魚飼育において、濾過の最たる機能と言えます。
また、水中を漂うゴミなどを目の細かい網などでこし取る物理濾過や、水を循環することによりヒーターで温められた水を水槽のすみずみにまで行き渡らせたり、大気との接触面積を大きくすることで効率的なガス交換(二酸化炭素の放出と酸素の取り込み)を行います。
フィルターの種類
フィルターほど種類によって一長一短なものもありません。エアー式は安価ですが動作音や振動が大きく、モーター式は高価なものであれば静かですが小型水槽には使えないなど、それぞれの特徴をよく理解した上で選択する必要があるでしょう。
外掛け式フィルター
小型水槽に用いられることの多いフィルターです。安価で入手しやすいですが濾過面積が小さく、一ヶ月もすると極端に濾過能力が低下しますので、こまめな濾材の交換など定期的なメンテナンスが重要です。フタをつけにくいため、スネークヘッドやポリプテルスなどの跳ねる性質を持つ熱帯魚には不向きです。
水中フィルター
小型モーターで水を循環するフィルターです。大きさの割には濾過面積が大きく浄化能力も安定しています。本体を水槽の中に入れる必要があるため、小型水槽に入れると、かなり狭くなったように感じてしまう場合があるかもしれません。また、モーター部は多少の熱を発しますので、夏場は水温が上がりすぎないよう涼しい場所に置いておくことが大切です。
上部式フィルター
水槽の上部に載せて使用するフィルターです。上部フィルターを取り付けるには一般的に45センチ以上の水槽が必要ですが、音も静かで濾過能力も高く、安価でメンテナンスも簡単という優れたフィルターです。ただし、上部フィルターは水槽の上半分を占有してしまうため、蛍光灯を一基しか置くことができません。そのため、明るさの必要な水草水槽には不向きと言えます。また、ポリプテルスなどは排水口からしばしばフィルター内部に飛び込んでしまうため、こうした熱帯魚の飼育には用いない方が無難でしょう。
底面式フィルター
水槽の底に敷き、底砂を通した水をエアーで汲み上げて循環させるフィルターです。底砂を濾材としているため濾過能力は高く、極小の熱帯魚でも吸い込まれる恐れがないためブリーディングにも適したフィルターです。うまく使えば水底に仔魚の初期飼料となるベントス類がわいてきますので、ブラインシュリンプでは育てられないような極小熱帯魚の繁殖にも効果的です。
底面フィルターは掃除の不便さが最大の欠点です。メンテナンスの際には水槽内の全てを取り出さなくてはならず、水槽が大きければ必然的に大がかりな作業となってしまいます。このため、濾材の頻繁な掃除が必要な水槽、例えば熱帯魚の数が多い水槽や大型熱帯魚の飼育水槽などには不向きです。
外部式フィルター
水槽の外部に設置する大型のフィルターで、強力なモーターにより大型水槽に使用しても十分な濾過能力を発揮します。小さな水槽では水流が強くなりすぎるため、大型水槽向きのフィルターと言えます。本体を水槽より低い位置に設置する必要があるため、水槽の配置などはフィルターの置き場所をあらかじめ考慮した上で決めておく必要があるでしょう。
熱帯魚の底砂について
大型熱帯魚やディスカスなどのように頻繁な水換えによって水質を維持する場合は、メンテナンスのしやすさからあえて底砂を敷かないベアタンクでの飼育が一般的ですが、そうした特別な事情がない限りはできるだけ底砂を敷いての飼育をおすすめします。熱帯魚の飼育において底砂は、様々な恩恵を与えてくれる重要な飼育用品のひとつなのです。
底砂は熱帯魚を飼育している限り水中に絶えず増え続ける窒素酸化物の毒性を速やかに弱めてくれる濾過バクテリアの住み家となります。水草を植えるにも重要ですし、底砂の色や大きさによってレイアウトの雰囲気も全く変わってきます。また、底砂の中には水質を変化させるものがあります。熱帯魚の種類に合わせて底砂を使い分けることができれば、より快適な環境を与えてあげることができるでしょう。
底砂の種類
熱帯魚水槽に使われる底砂は材質によってPHや硬度を変化させるものがありますので、熱帯魚の種類によっては相性が良くない場合もあります。ここではそんな話も織り交ぜながら、底砂の種類について解説していきたいと思います。
砂利
熱帯魚水槽の底砂として最もポピュラーで古くから使用されているのが砂利です。ひと口に砂利と言っても、粒の大きさや色合い、質感も様々で、好みによって選んでも差し支えないでしょう。砂利は基本的に水質に及ぼす影響の少ない底砂ですが、鉄分を多く含んだものや、硬度を上げるものなど、石質によっては多少の水質変化を及ぼす場合もあるようです。ところで以前は熱帯魚水槽の底砂といえば大磯砂利が主流でした。この砂利は特に小型アナバンティッドの繁殖に適した砂利でしたが、現在では採取禁止となっているため、よく似た代用品が用いられています。
サンゴ砂
海水魚水槽にはなくてはならない白い底砂です。主にサンゴの骨格で出来ており、成分は石灰質です。このため、硬度を上げると共にPHをアルカリ性に傾ける性質があります。こうしたことからアフリカンシクリッドのようにアルカリ性の硬水を好む熱帯魚には最適で、逆にベタやラスボラなどの弱酸性の軟水を好む熱帯魚には不向きです。
ソイル
ソイルは土で作られた砂利で、池や沼の底に近い酸性土壌を作り出します。石質の砂利に比べて軽く柔らかく、水草の根を傷つけることもありません。土壌だけでなく水質も酸性の軟水に傾けるので、多くの水草にとって理想的な底砂と言えるでしょう。使用していくうちに少しずつ崩れてきますし、水草も土壌に含まれる微量元素を吸収しますので、頃合いをみて新しいソイルと入れ替えてあげます。品質によっては極端なPHの低下を招く場合がありますので、熱帯魚水槽の底砂として使うのであれば、購入の前によく確認する必要があります。また、アルカリ性を好む熱帯魚には使えない底砂です。いずれにしても多少くせのある底砂ですので、初心者の方は避けておいた方が無難かもしれません。
溶岩サンドを使用した天然石水槽
溶岩サンド
多孔質の濾材によく似た構造を持つ、極めて濾過能力の高い理想的な底砂で、自然の川底のような雰囲気の水槽を作りたい場合にはうってつけです。
熱帯魚は底面が白っぽいと色が褪せてしまう傾向がありますが、溶岩サンドを敷くと落ち着いた暗色の底床を作り出すことができ、熱帯魚にもより深みのある色彩を期待できるでしょう。
人工砂
色とりどりのガラスやプラスチック、セラミックなどで作られた美しい人工砂も古くから使われています。自然には存在しない底砂ですが、実は水質に影響を与える心配がないという点で、あらゆる熱帯魚に安心して使用することのできるというメリットもあります。
濾過能力は高くありませんが、ビー玉などもグラスキャットなどの透明な熱帯魚には特によく似合う底砂です。
熱帯魚の照明について
ついつい後回しにされてしまいがちな照明器具ですが、光は熱帯魚にとっても水草にとっても大切なものです。何より熱帯魚の美しさは照明によって全く変わってきます。良い照明器具によって美しく浮かび上がる愛魚の姿は、飼育の喜びを何倍にもしてくれますし、愛情もいっそう深まって、ますますメンテナンスにも力が入るというものです。その結果、更に体調の良くなった熱帯魚は、また一段と美しさに磨きをかけてくれるという、こうした好循環が生まれてきます。照明は単に明るくなるという器具ではなく、人と熱帯魚をより深くつないでくれる大切な器具なのです。
照明器具の種類
ここでは熱帯魚水槽に使われる照明器具の種類について解説してみたいと思います。なお、蛍光灯には周波数の違いによって、50Hz用と60Hz用に分かれている製品があり、このような製品を購入する場合は、あらかじめ規格を確認しておく必要があります。
一灯式蛍光灯
シンプルで安価な蛍光灯です。蛍光管はひとつだけなので、特に水深のある水槽では暗く感じます。水草水槽にはあまり向きません。逆にナマズ類やモルミルスなどの夜行性熱帯魚にとっては、他の明るい蛍光灯よりは落ち着くかもしれません。
多灯式蛍光灯
複数の蛍光管を備えた明るいライトです。熱帯魚水槽は上部式フィルターを使わなければ上部に二基の蛍光灯を置けますので、二灯式蛍光灯を二つおけば、合計四灯となり、たいへん明るくなります。特に水深のある大型水槽で明るい光を好む種類の水草を育てる場合などに効果的です。ただし明るい分だけコケも生えやすくなりますので、照射時間は1日8時間くらいと、やや短めにした方が良いでしょう。
LEDライト
あまり熱を持たず電球の寿命も極めて長いLEDを採用したライトです。LEDは特定の波長しか出さない性質があるため、蛍光サンゴの育成などに使われることの多いライトですが、複数の色を組み合わせて熱帯魚水槽にも使えるようにした製品も開発されています。LEDは色によって植物の育成に極めて高い効果のあることが確認されており、水草育成用などとして今後の製品開発に期待のかかるところです。
ハロゲンランプ
LEDライトとは対照的な性質を持ったライトで、高い熱を持ち、電球の寿命も短いですが、単波長であるLEDはもとより、三波長である蛍光灯と比べても、はるかに深い輝きを持っています。ハロゲンランプの照明による、その自然で温かみのある光が浮かび上がらせる光景は、あたかも木洩れ日を浴びた美しい川底を覗いているかのような美しさです。
水槽の立ち上げ方について
熱帯魚を安全に飼い始めるための水槽の立ち上げ方をお伝えしていきます。
熱帯魚における水槽立ち上げのポイント
初心者の方は誤った手順で水槽を立ち上げようとして水を白く濁らせてしまったり、熱帯魚の体調を崩してしまったりと、どうしても立ち上げに失敗して水槽のバランスを崩してしまいがちです。特に濾過バクテリアの全くいない状態からのスタートは初心者の方には難しいため、すでに他の熱帯魚水槽に入っている水草(枯葉も含みます)、流木、砂などを入れることによって、濾過バクテリアが活動してない空白の期間をなくすことが大切です。
正しい手順で水槽を立ち上げた場合でも、念のため、アンモニアと亜硝酸塩の濃度を簡易的な試薬で計測されますと万全ですが、水槽の状態もおおよその目安となります。水槽の立ち上げが失敗していない場合はだいたい次のようなプロセスとなります。
- 水槽の立ち上げ初日は若干、水道水よりも透明度が落ちたように感じられる場合があります。
- 水槽の立ち上げから3日の間に、わずかに白く濁ったような状態になることがあります。この場合にはエサや熱帯魚の数を減らします。明らかに水が白く濁る場合には水槽の立ち上げに失敗していますので、もう一度、手順に誤りがないかをよく確認してみる必要があります。
- 水槽の立ち上げから一週間もすると、水はかなり透明になります。これ以降はますます水が澄んでいき、感覚的には水槽の中が輝いて見えるようになります。
- 水槽の立ち上げから一ヶ月ほど経ちますと、水槽は立ち上がった状態になります。この頃から濾過バクテリアの生成した硝酸塩により、わずかにコケがみられる場合があります。コケが多すぎる場合には硝酸塩を減らすために4分の1ほどの水換えを行い、エサや熱帯魚の数を減らします。
なお、市販のバクテリア剤はほとんどの場合、ここで解説している濾過バクテリアとは種類が別になりますので、こうしたものを使用する場合でも、やはり熱帯魚を飼育している水槽にしばらく入れておいた水草や流木、砂などを入れることにより、その表面にいるわずかな濾過バクテリアが少しでも早く殖えることを期待するのが良いでしょう。
亜硝酸塩の毒性はたいへん強く危険ですが、淡水性の熱帯魚でしたら海水魚と違い、亜硝酸塩が増えたからといって鼻上げなどの前ぶれもなく突然死んでしまうというようなことはそうありません。むしろ水温や水質の変化などで弱り切ってしまったために、わずかな亜硝酸塩の増加にも耐えきれなくなってしまうというケースが危惧されます。
環境が不安定なうちはあまり水をいじらず、できれば1〜2週間後に、熱帯魚も環境に慣れ、ある程度の変化にも耐えられる体力がついてから、最初の水換えをしてあげるのが無難です。熱帯魚を飼い始めて一ヶ月も経つ頃には濾過バクテリアもだいぶ殖えて環境も安定してくるため、管理にも手がかからなくなってきます。
最初に入れる熱帯魚とアカヒレ
熱帯魚は種類によって丈夫だったりそうでなかったりしますので、環境の不安定な立ち上げの際には、できるだけ丈夫な種類の方が成功しやすいと言えます。特に次のような種類がおすすめです。
立ち上げ時の水換えについて
熱帯魚の飼育を始めて、最初に水換えをするタイミングというのは初心者の方が最初に直面する壁です。これは飼育している熱帯魚の数や種類によっても違いますが、主なポイントはふたつあります。ひとつは濾過バクテリアが少ない状態では、熱帯魚の飼育によって生じるわずかなアンモニアでも危険な状態になりかねないということがあります。その一方で、アンモニアは濾過バクテリアを殖やすのに必要となります。
熱帯魚が安全な状態までのアンモニア量を維持するような飼い方が水槽の立ち上げには有効です。具体的には最初に入れる熱帯魚の数を少なくして、エサもごく少量にすることにより、毎日、わずかずつのアンモニアしか発生しないようにするというものです。濾過バクテリアが繁殖するのに必要な量のアンモニアしか発生しなければ水を換える必要はありませんし、また、熱帯魚に水換えによる水質変化という余計なストレスを与えることもありません。
ただし、水草や流木など、他の水槽に入っていたものが何もなく、本当に濾過バクテリアがゼロの状態から始めるとなると事情は更にシビアになります。この場合は熱帯魚の数がいかに少なくても、最初の1週間は可能なかぎり、4分の1ほどの水換えを行う方が失敗が少なくてすみます。
飼育できる熱帯魚の数
熱帯魚をどのくらい飼育できるかは、水槽の大きさとフィルターの性能によります。ですが、どんなに高性能のフィルターがついていても、水槽をセットしてすぐの頃は、濾過器をつけていないのと大差ありません。差が出てくるのは濾過バクテリアが本格的に活躍しはじめる一ヶ月後くらいからです。
そのため、水槽の立ち上げ時には、水を2リットルに対して、メダカくらいの大きさの熱帯魚なら1匹を目安に飼い始めると良いでしょう。フィルターがついているなら2週間後くらいからは少しずつ増やしていくことができるようになります。
さて、水槽をセットしてから一ヶ月もすれば、だいぶ立ち上がってきますが、最終的にどのくらいの熱帯魚を入れるのかも大切です。これはひとえにフィルターの大きさによります。濾材には物理濾材(ゴミを取り除きます)、吸着濾材(脱色、脱臭に効果があります)、そして生物濾材(濾過バクテリアの住み家)があります。
物理濾材は水に溶けた有害物質は取り除けず、吸着濾材の効果は一時的です。そのため、いかに生物濾材をたくさん入れることのできるフィルターであるかが重要です。生物濾材を大量に入れることのできるフィルターであれば、極端な話、10リットルほどの水槽にメダカくらいの大きさの熱帯魚を100匹以上も入れることができます。ただし、注意しなくてはならないことがあります。特に酸素不足と硝酸塩については要注意です。
過密水槽の注意点
まずは酸素不足についてです。ほとんどの熱帯魚は水中に溶けている酸素を取り込んで呼吸をしています。ですが、過密な飼育環境では酸素はすぐになくなってしまい、熱帯魚たちは水面から口を出して口をパクパクし始めます。これは鼻上げと呼ばれる現象ですが、たくさんのネオンテトラなどが水面で鼻上げをしている様子はとても見ていられない光景です。このため、十分なエアレーションを行い、水と空気が触れる面積を大きくして、しっかりと酸素を供給してあげる必要があります。
そしてもうひとつ、過密な水槽には落とし穴があります。それは硝酸塩です。
大量のアンモニアや亜硝酸塩も優秀なフィルター内の濾過バクテリアによって、毒性の弱い硝酸塩に変えられます。しかし、硝酸塩は無害ではありません。蓄積すれば熱帯魚の免疫機能に障害を起こし、病気にかかりやすくなったりします。また、コケの増殖を促進し、これによって水草が弱れば、環境はますます悪くなっていきます。
熱帯魚のたくさんいる水槽には必然的にアンモニアの量も多くなりますし、その分だけ、アンモニアを元に作られる亜硝酸塩、そして硝酸塩も多くなります。つまり、熱帯魚の過密水槽では、この硝酸塩のたまるスピードがとても速いのです。
硝酸塩は水草の肥料にもなりますが、それは極めてわずかな量ですので、とても水換えなしに減らすことはできません。このため、熱帯魚の過密水槽ではできるだけ頻繁な水換えが求められます。また、濾材の汚れも速く、硝酸塩の温床にもなりやすいので、これもこまめにメンテナンスしなくてはなりません。
理想的な熱帯魚水槽
水槽にたくさんの熱帯魚を入れるのはにぎやかで楽しいものですが、それに伴って管理も大変になってきます。熱帯魚の飼育が苦痛にならないようにするためには、どのくらい水槽のメンテナンスに時間をとれるかということもよく考えてから熱帯魚の数を増やしていくのが大切です。
それほど大きくない水槽でも、熱帯魚と水草、濾過バクテリアの量にバランスが取れていれば、フィルターがなくても、ほとんど手間をかけずに長い期間、良い環境を維持することができます。
ごく小数の小さな熱帯魚に適切な量のエサを与えていれば、発生するアンモニアもごくわずかです。それを流木や砂の表面にいる濾過バクテリアが亜硝酸塩を経て硝酸塩へと処理していきます。発生するアンモニアがわずかですので、これが処理された硝酸塩の量も極めて少なく、また、このくらいの量の硝酸塩であれば、水草も肥料としてだいぶ吸収することができます。
このようなバランスの取れた環境づくりは、もともと日本では古くから行われてきたことです。日本ほど水質に恵まれていないヨーロッパで発展した近代的な熱帯魚飼育もとても理にかなった方法ですが、両方の良いところを取り入れることで、熱帯魚にとってより良い環境を作ってあげることができるのではないかと思います。
※1 水槽に3センチくらいの熱帯魚を入れる場合の目安です。
※2 水槽の中に濾過バクテリアが殖えるための準備が整い、安全に飼育を開始できる目安です。これより早くお魚を入れても飼育できますが、病気にかかりやすくなったり、生存率が極端に低くなったり、水が白く濁ったりする場合があります。
※3 立ち上げとは水槽の中に十分な濾過バクテリアが殖え、水槽の中が熱帯魚にとって安全な環境になることを指します。
※4 飼育している熱帯魚の種類や数、エサの質、量、回数などにより変動します。
濾過バクテリアについて
熱帯魚を飼育していると水槽の中に有害な窒素酸化物が発生します。これを安全に処理してくれるのが濾過バクテリアです。ところが濾過バクテリアはセットしたばかりの水槽にはほとんどいません。この状態は環境がとても不安定で、熱帯魚にとっても危険です。そのため、この濾過バクテリアをいかに十分な数にまで殖やすかということが大切なのです。
水をきれいにしてくれる濾過バクテリアは、大気中や水草、すでに熱帯魚を飼育している水槽の砂利や濾材、流木や水の中など、あらゆるところにいます。これらはいろいろな種類がそれぞれ複雑に作用しあっていますが、中でも重要なのが、アンモニアを亜硝酸塩に変える濾過バクテリアと、亜硝酸塩を硝酸塩に変える濾過バクテリアです。
熱帯魚を飼育していますと、必ずアンモニアが発生します。これは熱帯魚にとって害がありますので、濾過バクテリアによって亜硝酸塩に変えてもらうのですが、亜硝酸塩もまた極めて毒性が強く、最も注意しなくてはならないものです。そのため亜硝酸塩はまた別の濾過バクテリアによって毒性の弱い硝酸塩に変えてもらわなくてはなりません。これを生物濾過と言います。
この特に重要なふたつの濾過バクテリアをいかにたくさん殖やすかが、水槽の立ち上げにおいては最も重要です。これら濾過バクテリアはわずかなアンモニアをもとに亜硝酸塩や硝酸塩を作り出しながら順を追って増殖していきますが、濾過バクテリアが十分な生物濾過が行える数になるには熱帯魚を入れてから数週間から一ヶ月くらいかかります。
このため、この間は熱帯魚を少なめに入れて、エサは絶対に残らないよう、すぐに食べきってしまう量だけを与えることが大切です。少なすぎると思われるかもしれませんが、これは熱帯魚を安全に飼育するためには特に注意したいポイントと言えます。
アクアリウムで話題にのぼる濾過バクテリアの働きはここまでですが、実際の生物濾過はここで終わりではありません。河川の水質浄化においては亜硝酸塩をチッ素に変える嫌気性細菌が極めて重要な役割を持っています。
自然の河川では嫌気性細菌によって亜硝酸塩はチッ素に還元されます。ここで亜硝酸塩が多すぎる場合には処理が追い付かず、亜硝酸塩の一部が硝酸塩になってしまいますが、硝酸塩をチッ素に還元するにはいったん亜硝酸塩に戻さなくてはならないため、より富栄養化(水が汚れた状態)を改善するのが難しくなります。
嫌気性細菌は酸素の少ない場所を好みます。このため濾過器などで水槽の隅々にまで酸素が行き渡ると嫌気性細菌が活動しなくなりますので、この場合はこまめな水換えにより硝酸塩を除去します。また、海水は硫黄分を多く含むため、海水魚の水槽では酸素の少ない場所から有害で悪臭のする硫化水素を生じやすい場合があります。
ところで自然のサイクルにおいてアンモニアや亜硝酸塩、硝酸塩などに含まれるチッ素を固定化できるかどうかも重要です。好気性バクテリアはチッ素を還元することも固定化することもできず、硝酸塩を生産しつづけることしかできません。このため、こうした濾過バクテリアは自然のサイクルから考えると短期的な処理能力しかないのです。
チッ素を固定化する代表的な生物はコケですが、コケの発生は水槽の美観を著しく損ねます。そのため、水槽内にチッ素を固定化できる様々な微生物による食物連鎖を作り上げることが、水槽を長期にわたり状態良く、しかも美しく維持するためのコツになります。
特に植物性プランクトンは水槽内で過剰になりやすいチッ素とリンを効率よく固定化してくれますが、たいていの場合、フィルターによって濾過されてしまうため、熱帯魚の水槽では共存の難しい生き物かもしれません。
困ったときの対処法
熱帯魚を飼育していて困ったときの解決方法をお伝えしていきます。
水が白く濁る
これは水槽内に濾過バクテリアが少ないときに起こりやすく、水槽内に有害な物質が増加している場合が多く、このような時にエサを与えるのは大変きけんです。なお、水槽をセットした初期に生じる白い濁りの正体は大増殖した雑菌です。これは濾過バクテリアのいない状態で熱帯魚を入れてしまった場合などに起こります。
こうした場合の対処法としては、まず水がかなり白く濁っている場合は水槽をセットしなおして、水も全部取り替えます。うっすらと濁っているような場合は、2〜3日のあいだエサを与えずに様子をみます。この際、観賞魚用の竹炭を入れておくと、かなりの効果を実感することができるでしょう。
こうして水が澄んできたら、一ヶ月くらいはエサの量をほんの少量にとどめておいてください。エサの与えすぎは熱帯魚にとって様々な悪影響を及ぼします。くれぐれもご用心を。
なお、流木を入れると水が茶色になってきます。これは流木から腐食酸などが溶出するためで、水が真っ黒にでもならない限り害はありません。熱帯魚の種類によっては腐食酸が熱帯魚の調子を上げ、繁殖のきっかけになることもあります。
熱帯魚が病気かもしれない
熱帯魚も様々な病気にかかります。特に多いのが白点病です。白点病は体に白い点がつきますので、すぐにわかります。急に温度が下がったときなどには特に発生しやすく、こうした時は注意が必要です。治療は簡単で、早期発見を心がけていれば薬品は不要です。まずは10リットルに対して大さじ一杯の食塩を加えて、できるだけ温かくしてあげます。28度から30度くらいが理想です。これだけでたいていは1〜2日で治ります。白いモヤモヤがつく綿かぶり病も同様にして治療します。
体が膨らんだり、ヒレの端が赤く溶け出しているように見える場合は、抗生物質の投与が必要です。熱帯魚用の魚病薬として「尾ぐされ病」「松かさ病」用の治療薬が市販されていますので、これらを規定量つかいます。
なお、水草は塩や薬品に弱いので、病気治療の際には別の容器に移しておきましょう。どうしても水草を移せない場合は、水草に害の少ない魚病薬もありますので、これを利用しましょう。また、エビにとって薬品類は致命的です。熱帯魚とエビを一緒に飼育している水槽に治療のための薬を使う場合は、必ず全てのエビを他の水槽に避難させてあげてください。
熱帯魚の元気がない
まずは水温に注意してみてください。熱帯魚は変温動物ですので、水温がそのまま体温になります。そのため、種類にもよりますが、だいたい20度以下になると元気がなくなり、15度くらいでは水底に横たわってしまいます。こうなってしまった場合、ゆっくりと水温を上げることにより再び元気に泳ぎ出すことも多いので、例え水底に横たわっていたとしても慌てずに温かい部屋に移してあげましょう。なお、お湯などを入れて急激に温度をあげるようなことは絶対にしてはなりません。
逆に温度が30度を越える日が何日も続くと、熱帯魚も夏バテを起こすことがありますので、その際はできるだけ涼しくしてあげてください。
温度に問題がないようでしたら、次は水について考えてみましょう。熱帯魚にはそれぞれ好みの水質があります。水質は大きくPHと硬度に分けられます。PHは酸性かアルカリ性かの指標で、硬度は水中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量で、こちらはあまり極端だとエラなどに影響を及ぼします。いずれにしても水道水を使っている場合はほぼ中性のため、一般的な熱帯魚にとってはあまり問題とはなりませんが、井戸水などを用いる場合は、念のためPHと硬度を測っておくと安心です。
さて、水道水から出てすぐの水にPHや硬度の問題がなかったとしても、水質は熱帯魚を飼育しているうちに次第に変化してきます。熱帯魚の排出するアンモニアが変化した亜硝酸塩や硝酸塩が蓄積してくると、これによって徐々にPHが下がる(酸性になる)場合があります。これに酸素不足が加わると二酸化炭素によって更にPHは下がり、これも熱帯魚を弱らせてしまう原因になります。また、それ以前に亜硝酸塩や硝酸塩は熱帯魚にとって危険な有害物質であり、特に亜硝酸塩の増加は熱帯魚の生命を脅かすので十分に注意する必要があります。
これらの問題を解決する一番の方法は水換えです。定期的な水換えによって亜硝酸塩や硝酸塩は減りますし、水道水に含まれる微量元素は水草の栄養となり水草も元気になります。活力を得た水草は水中の有害物質を肥料として吸収してくれたり、光合成がいっそう活発に行われることによって生み出された酸素はPHの下がりすぎをくいとめ、また、十分な酸素は濾過バクテリアを元気にすると共に、多くの病原菌を撃退します。
このようにいかに自然のサイクルを上手に作り上げていくかが熱帯魚飼育のポイントになります。良質なエサと、少なめのエサやり、そして定期的な水換えによって、底砂の有益なバクテリアを育てていけば、やがて調和した水槽は半年以上も水換えせずに良い状態を保ち続けられるようになることもあります。